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それはまぎれもなく幻の黄金うどん

幻のうどん屋を発掘する図

ご挨拶(正拳突き)

おはよう、皆の衆。定次さんです。

このお話はもうかれこれ2ヶ月以上前の出来事です。

 

その日私は昼食にそば屋さんへ立ち寄りました。

そのそば屋さんは特別何か有名というわけでもない、至極普通に美味しく、リーズナブルで何の変哲もないお店。そんな平々凡々なそば屋さんで私はお昼を嗜みました。

昨今のそば屋さんではアレルギーや好みに配慮しているのか、そばだけでなくうどんを提供しているお店も多かったりします。

今回立ち寄ったそば屋さんも一概ではなく、大体のメニューのそばをうどんと切り替えることができるようになっていました。

私は冷たい麺が好きなので、そばだろうがうどんだろうが冷たいものをすすることができればそれで良いと思っておりましたが、その日の気分はおそばではなくうどんという気分で、そば屋さんに入ったにも関わらずうどん目的で混雑する席の中へと紛れ込みました。

うどんを食べたいという気分であって、具体的どういったうどんを食べたいのかは決めておりません。

ましてやそばとうどんを切り替えられるくらいの幅の広いお店のことです。うどんの種類だけでも結構な数があり、お品書きを開いてはじっくりと何を食べようかと顎に手を添えて深く考えておりました。

 

「――黄金そば?」

 

一つのメニューが目に止まりました。

それは私の好みではない温かな丼でしたが、そばの上に恐らくお餅であろう天ぷらが添えられているものであって、一風変わった雰囲気を醸しつつ、マストな美味しさをポテンシャルに秘めたメニューであると直感しました。

勿論このメニューもそばとうどんの切り替えが可能。そばではなくうどんという気分であったためにこの『黄金そば』とやらを即座にうどんにシフトしていただくことと決めました。


すみませーん。

はい、何にいたしましょうか?

この『黄金そば』を一つ。

はい。黄金そば一つですね。かしこまりました。

あ、これそばをうどんにできますか?

はい、こちら黄金うどんにすることもできます。

じゃあそれで。

はい、ではこちら 黄 金 うどん一つ、承知しました。

・・・。


この日の昼食の味を私はあまり覚えていません。

それは2ヶ月という月日が経過したからというわけではなく、注文を取ってくれた店員さんの対応が気になってまともに味わうことができなかったからです。

上記のやり取りを見て、皆さんはどんな状況であったのか理解できたでしょうか?

これは私自身が無知だったのか、店員さんの融通が利かなかったのかだけなのか……それは今となってはどうだっていいお話ではありますが、当時の私からしたらとてもそんな気分になれるものではありませんでした。

お品書きに書かれていた内容はまぎれもなく『黄金そば』。黄金色に揚がったお餅が乗っかる美味しそうなおそばです。

そして皆さんはこのお品書きを読んで注文をする時、何と読んで注文するでしょうか。

そのおそばは『おうごん』でしょうか?それとも『こがね』でしょうか?

私はその瞬く見た目からそばを『おうごん』と例えました。しかしその注文を聞き、店員さんはこれでもかと言わんばかりに『こがね』を何度も強調したのです。

気にしない人は気にしないでしょう。しかしどんな些細なことでも自身の誤ちを認めたくない瞬間という時は誰にだってあるものです。

うどんをすすり、汁をすするその最後まで私の頭には注文の仕方の良し悪しがいつまでも尾を引いておりました。それはもう伸び切った麺のようにずっとずっと尾を引いておりました。

恐らく業界からしたら常識の知識なのでしょう。しかし私はそば界隈の外にいる人間。ルビの一つも振ってもらわなければお品書き一つも注文できない無知識者です。

 

本来2ヶ月もすればこんなネタはボツとなってお蔵入りするのが私の中では常識です。

しかしいつまでも引きずって、いつか記事に書き殴ってやろうと思っていたということはそういうことなのです。

いつだって『金』は人の心をまどわすもの。そば、うどんくらいは心穏やかにすすらせてもらいたいものです。


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