【空想カオスツール】天まで届くがんばる豆


おはよう、皆の衆。定次さんです。
植物の生命力というものはなかなかどうしてたくましく、道端でアスファルトを突き破りながら生えている花なんかを見ると、どこか感慨深いものを感じる――というのが世間一般の声にあるようですが、精一杯生きている植物からしたらそんな想いを感じる術や器官なんてものはどこにもなく、植物から考える根性論というのは人間のエゴなのではないか――と、私はこれまで生きてきた中でそんなことを考えたことがありませんでした。
つまるところ、植物は生命力の源であり、根性論の比喩にぴったり。
栄養の少ない硬い土の中でも頑張れるのなら、人間もそれに見習えというのが世に蔓延るよくある根性論なのです。
――ただ、私は思うのです。
植物が頑張っているからって別に自分も頑張る必要はないのではないかと。
別段、私は植物の存在を軽視しているわけではありません。
実際問題、しっかりと根を張ってたくましく育つ植物と自分を照らし合わせて「頑張ろう」という気持ちを奮い立たせるのは良いことであると思います。
……いや、それで自身の考えがポジティブに切り替えられるのであれば良いことでしょう。
人間誰しも物事を考えるだけならタダです。
最近の私は以前と比べてネガティブな考えを凝らす機会が増えてしまいました。
私も頑張る植物たちをお手本に、毎日を強く生きていきたいと思います。
――して、最近起きた出来事なのですが、私も年齢を重ねるに連れて肉よりも野菜をモリモリと食べたくなる機会が増えました。
これはヴィーガンだとか、ベジタリアンだとか――そういった融通の利かない思想の強い話ではなく、単に野菜が美味しく食べられると感じる機会が増えたという話。
火を通して食べるよりも、生の野菜をむしゃむしゃと食べるひとときはどことなく健康と生命力を感じて喜びを見出すようになりました。
先日なんかはかいわれ大根を混ぜたサラダを食べたのですが、この手の野菜は透明なプラスチックのパックに根っこごと梱包されている場合が多く、調理の際は根っこ部分を包丁で切り落として食べるのが基本です。
切り落とした後、根っこ部分は三角コーナーに捨てる場合がほとんどだとは思いますが、この根っこ部分がまたなかなかどうして大きなもので――、三角コーナーにぶち込んだところでかさばってしまいます。
――きっと皆さんもそんな経験をしたことがあるでしょう。
ただ、この捨てられた根っこも放置しておけばいずれは育つわけでして。
そんな植物のたくましさに思うところがあったと言いたいのが今回の前置きのテーマになるのですが――、先日私はそんな三角コーナーに打ち捨てられたかいわれの根っこの上に、カップ麺を作る際に使用した電気ケトルの残り湯を思い切り捨ててしまったということがありました。
熱湯をかけられたかいわれの根っこは、瞬間的に加熱されたことで湯気とともにかいわれ特有のニオイを部屋に充満させました。
特別このニオイが悪臭――というほどでもないのですが、なかなかどうして部屋いっぱいに充満したこの"かいわれ臭"というものが不快に感じまして。
やがてこのかいわれ臭も消えてなくなったのですが、生ゴミの溜まった三角コーナーに捨てられたかいわれに熱湯をかけるとちょっと後悔すると、その日の私は学んだのでした。
――で、その翌日、私はパスタを茹でたのです。
最近はもっぱら素パスタで白飯の代用をするのがマイブームになっていまして、その日はお腹を満たしたいからとそこそこの量のパスタを茹でました。
ただ、茹で上がったお湯を捨てる際、またしても私は三角コーナーにそのお湯を捨ててしまいまして。
前日、熱湯をかけたことでかいわれ臭が部屋いっぱいに充満して嫌な思いをしたというのに、再び部屋いっぱいにかいわれ臭を立ち込めさせてしまったのです。
臭い臭いと思いつつ、換気扇を回して事なきを得たのですが、またしても同じ過ちを繰り返してしまったことにやり場のない憤りを覚えつつ、それでいて熱湯をかけられたことで鮮やかな緑色に発色するかいわれに植物の神秘を覚えたのでした。
植物の生体には不思議がいっぱい――。
生命力の象徴、それが植物。
今回の話にあるかいわれだけに限らず、植物のたくましさには目を見張る部分があります。
私はそんなたくましさから着想を得て、今回こんなものを考えてみたのです。


バリムシャー!!

うーん、やっぱりレタスはそのまま丸かじりするに限るなぁ!

ドタドタ
ドタドタ

助けてトトえも〜ん!
またいじめられまして〜!

なんですか、騒々しいですね。
レタスにかけたドレッシングがこぼれちゃったじゃないですか。

レタスを丸ごと食べると虫とかいそうで怖くないですか?

まぁ私はロボットなので虫とか平気ですし。

それもそうか。

・・・じゃあなくて、またしてもセレァンにいじめられまして。

食べ終えた後に相談に乗って差し上げますよ。

バリムシャー!!

バリムシャー!!

ゴクン

それでですね。

バリムシャー!!


ゴクン

で、なんでした?

セレァンが不動産事業に成功したからって負けじと虚勢を張ったのですが、後に引けなくなってしまいまして。

バカじゃねえの。

セレァンは冗談だと笑ってくれているようですが、このままだと私のプライドが傷つきます。

例えそれが嘘でも、対抗心を燃やすというのは良いことです。

バカじゃねえの。

お願いですから、何か一攫千金が得られそうな道具を貸してください。

バカじゃねえの。


チッ

じゃあ、はいコレ。


テッテレテーッテッテー!!
『天まで届くがんばる豆』!!

なぁにこれ。

文字通り、天まで届く豆の木の種です。

・・・ジャックと豆の木的なやつです。

これを庭に植えたら天まで伸びるんですね。

それくらいの生命力がある種です。

長年品種改良を繰り返して、先日ようやくできあがりました。

で、天まで伸びたツルを登って一攫千金を狙えと。


なるほど、では早速庭に植えてみたいと思います。

すぐ伸びると思いますよ。

楽しみですね。


ドタドタ
ドタドタ

トトえも〜ん!
昨日植えた豆の木が大変なことに〜!

はぁ、どうしましたか。

ツルが上に伸びずに庭いっぱいに広がっていまして〜!

こんなんじゃ雲の上に行けませんよ〜!

そりゃあね。

添え木がなきゃツルも上に伸びませんよ。

まぁ雲の上に行ったところで・・・という話でもありますが。

こんなことなら最初から添え木が必要って言ってほしかったですね。

というか、天まで続く添え木がある時点で豆のツルも必要ないのでは・・・?

そもそもジャックと豆の木の話自体、楽して稼げるみたいな話じゃないですし。

それを勉強する良い機会になったのではないでしょうか。

そんな〜。

わっはっは。

この豆の木を使って一緒に豆の栽培を始めましょう。

・・・なんて?

一緒に豆を栽培しましょうですって。

いい仕事が見つかりました!ありがとうトトえもん!

農業は大変ですよ。
植物と向かい合わなければならないですからね。

わっはっは。