パン屋さん探訪録


おはよう、皆の衆。定次さんです。
いきなりですが、皆さんは『朝食に食べるならご飯派』ですか?それとも『パン派』ですか?
世の中には様々な人間が生きていて、この『朝食にご飯』もしくは『朝食にパン』という問いかけに対して「自分はシリアルを食べているから」だとか「朝食は食べない派」といったイレギュラーな回答をしてくるような人も多いとは思うのですが――、あくまで私が聞きたいのは『朝食として食べるならご飯orパン』という質問であって、皆さんの自分語りなんて正直どうだって良いと思っています。
せっかく記事の冒頭からディスプレイを介してのコミュニケーションをしようと譲歩しているのですから、素直に答えてくれれば良いものの、そこで自我を出されてしまっては建設的な会話も破綻してしまうというものです。
因みにですが、私自身についてはこんな二つに一つといったような質問は無粋だと考えておりますので、食べられるのであればぶっちゃけどちらでも良いと思っています。
日頃から朝食としてはタイパを考えて食パンを食べる場合が多いのですが、食器洗いや炊飯の手間を省けるというのであれば、朝っぱらから白いご飯を食べても良いのではないかとも考えます。
まっさらな食パンの上にペタペタと何かしらを塗りたくって食べるのも慌ただしい朝食としてピッタリのメニューですが、焼き鮭に味噌汁、生卵と納豆と簡単な漬け物、そして個包装された味付け海苔が食卓の上にズラッと並ぶ朝食もまた壮観でしょう。
何なら別にシリアルを用意して食べても良いと思っています。
子供の頃から憧れの的だった甘いシリアルを大人買いし、底の深い容器の中にザラザラと好きなだけ盛り付け、そこに冷たい牛乳を少し少なめに注ぎます。
牛乳を吸ってふやけてしまいそうな、ちょっと食感が残っているあたりでかき込むように食べて、最後に残った甘い牛乳を喉を鳴らしてグビグビと飲み干す気分は贅沢の極みと言えるでしょう。
だから朝食にご飯もしくはパンだなんて野暮な質問はなしにして、自分の好きなものを食べれば良いと私は思うのです。
ただ、やはり折角質問を投げかけているわけですから、真面目な人はこの『パンかご飯か』という選択肢を選んで答えても良いでしょう。
今回の記事を眺めながらディスプレイに向かってひたすらに「ご飯!」「パン!」だのと声高々に答えようとする皆さんの姿が目に浮かびます。
傍から見てその姿はとてもとても見ていられませんが、皆さんが朝食に何を食べるかという確固たるポリシーはきっと誰かに通じると、私は鼻の穴をほじくり回しながら信じたいと思います。そしてその流れから始めさせていただきます、今回の記事でございます。
どっちの歯で噛む?
子供の頃に歯磨きを怠ったツケが今となって回ってきたのか、大人になってからというもの一気に虫歯が増えました。
歯を磨かなくても平気――そんなふうに汚い歯で笑顔を見せていた子供時代の私でしたが、当時の私は子供ながらに軽度な虫歯こそあれど、そこまで大事にまで至らないほどに健康な歯を維持していました。
きっと当時のそんな虫歯を軽んじて見ていたのが悪かったのでしょう。
成人し、一人暮らしを始め、ふと気がつけば口の中は虫歯だらけ。これまで辛うじて形を保ち続けていたであろう歯は、それぞれが示しを併せたかのように一気に崩壊してしまいました。
いつしか奥歯は治療の末に据え付けられた銀歯だらけに。
口を開ければ銀歯ばかりと、みっともない姿になってしまった私のお口。
そのうち、左右バランスよく銀歯が差してあることだけが取り柄だと開き直るほど落ちぶれてしまいました。
金属だから丈夫だろう。
多少不格好でも咀嚼さえできれば大丈夫だろう。
そんな「〜だろう」を続けてこれまでずっと過ごしてきた私でしたが、ある日唐突に銀歯の根が酷く痛むようになりました。
銀歯は半永久的に虫歯にならない……そんなふうに考えていた時期が私にもありました。
文字通り蓋を開ければ銀歯の接着は経年劣化で弱くなり、歯の根には膿が溜まって炎症が起きていました。
歯の大半を削ったところで、歯の神経を取り除いたところで虫歯がなくなることはない――銀歯になったからとうつつを抜かしていた自分が恥でした。
患部の奥を洗浄し、新しく型を取り……最近開業したばかりで人気の歯医者さんということもあってか、なかなか予約も取ることができず、長い長い治療期間を要しました。
その間ずっと私は仮の蓋を被せられた状態で過ごしていたのですが……下手に強く咀嚼をしてしまえば蓋が取れ、尚且つ痛む。
それ故に患部を庇おうとひたすら反対側の歯で噛むように心がけながら日々を過ごしていたのです。
――そしてその結果。
長い間片方の歯で噛むことばかりを続けてしまったために顎の筋肉が偏った付き方をしてしまいました。
自然に笑顔を見せようと思えば片方だけの口角が上がるようになり、もう片方の口角はプルプルと震えてしまいます。
バランスよく噛み合わせなければこんなにも笑顔が引きつってしまうものかと、鏡を見る度不細工な笑顔に落胆するばかり。
どうしようもなかった――そんなふうに自分に言い聞かせはするものの、なってしまったものはどうしようもない。
今や私はキーボードで文章を打つ傍ら、近所のドラッグストアで購入してきたガムボトルを噛んでいます。
衰えてしまった顎の筋肉――ガムをしきりに噛むことで何とか不細工な笑顔を戻そうとする日々を最近は過ごすばかりです。

近所にパン屋さんが新しく開店するらしい――。
――先日、我が家のポストに手作り感のある小さなチラシがポスティングされていました。
私は、そんな小さなチラシを見て思わず冒険をしたくなりました。
新しいパン屋さんはどんなお店だろう……。美味しいのかな?値段はいくらくらいかな?歩いていける距離にあるのかな?
まるで新作ゲームの発売日を楽しみに過ごす子供のようにオープンを待ち遠しくしていた私でしたが、いざ実際に開店を迎えたところで一目散に向かう――なんてことはなく、それとは別に私のとある悪い癖が出てしまった――というのが今回のお話になります。
チラシを頼りに一直線にお店に向かうのも悪くはないでしょう。
きっと恐らく、この世の殆どの人はオープンに間に合うようにチラシを片手にパン屋さんに向かうと思います。
ただ私は手書きの地図が載ったその小さなチラシを家に置いた状態で、ざっくりとした住所だけを覚えて、その記憶だけを頼りにパン屋さんを探しに出かけたかったのです。


開店時間20分前。
出かける前に住所を覚えようとしたものの、頭の中に残ったのは真新しいものに対する興味と関心だけで、辛うじて覚えていたのは『隣の区の何丁目』という情報だけでした。
“何丁目"かという情報さえ分かれば歩いて見つけるのも容易いだろう――そんなふうに考えてサンダル履きで歩き回っていたのですが、どういうわけかこれがなかなか見つからない。
途中、うっすらとアパート名を思い出して1階にテナントのあるアパートを重点的に探してみたものの、やっと見つけたのぼりの立っているアパートへと早足で向かったところ、そこに入っていたのはクリーニング屋さん。
何かに惹かれて色々と探し回る時の体力というのは無尽蔵なものですが、その地区の広さを甘く見ていたのか全く見つからない実情に、私の焦燥感は徐々に増していったのでした。
気付けば開店時間はゆうに過ぎて、焦る気持ちは遂にピーク直前に。
20分も余裕を持って出かけたのです。結局見つからずに終わってしまっては何のために出かけたのかわかりません。
住宅街の中を縫うように延々と歩き、地区全体の3分の2くらいを網羅しました。
流石に路地の全ては歩ききれないので見落としもあったかとは思いましたが――いよいよ地区の端も見えてきた。
大通りを区切りにしてこの地区は終わり――きっと新しいパン屋さんもこの大通り沿いにあるのだろうと私は拓けた道の先に出て、左右にそれらしいお店はないかと確認したのでした。

大通りに出た先には――何もありませんでした。
ただ普通に交通量の多い大通り。週末だからと車が忙しく左右へと駆けていく光景しかそこにはありませんでした。
あれほどまでに歩き回って見つからなかったのは一体何故か。
だいぶ練り歩いたとは言え、見落としも多かった。
恐らくその見落とした場所に目的のパン屋さんがあったのだろう……私は少しばかりため息をつき、通っていない道から引き返そうとした――その矢先でした。
「こんなところにラーメン屋さん……?」
住宅街のど真ん中に佇むラーメン屋さん。その佇まいは非常に寂れた様子で、何ともエモい。
こんなところにラーメン屋さんなんてあったのかと咄嗟にスマホで調べるものの、全くそんな情報はヒットしません。
朝方なので暖簾もまだ掛けられていませんでしたが、外装にベタベタとたくさん貼り付けられたメニューの札を見る限り、ここは隠れた穴場だと私は確信を持ちました。
冒険心から出かけたパン屋さん探訪録。
思わぬ出会いに新たな冒険心が湧き立ち、後日改めてこのラーメン屋さんに訪れてみようと思ったのでした。


・・・で、パン屋さんは見つかったんですか?

見つかったそうですよ。
スマホで住所を調べたら大通りから正反対の場所に位置していたそうです。

何でそのことを記事に書かないんですか。

えーっと、

話が長くなるからだそうです。

一番大事なところじゃん。書けよ。

まぁいいじゃないですか。
無事パン屋さんに行けたことですし。

で、実際パン屋さんはどうだったんです?美味しかったんですか?



・・・あまり話を長くしてもアレですし、まぁいいじゃないですか。

何が。

何で。

・・・開店間もなかったということで、お店のパンはほとんど売り切れていたそうです。

ダメじゃん。

サンダルで歩き回ったから靴擦れで大きな水ぶくれができちゃったそうですし、ロクなことなかったっぽいですね。

だからそれを書きなさいよ。

後から遅れてやってきたおばちゃんが売れ残ったパンの一つを推してて、横で聞いていた定次さんがつられて買おうとしたらおばちゃんが一緒に会計してくれて、ご馳走になったって出来事もあったっぽいですね。

だからそれも書けって。

帰り道に少しだけ世間話をして、近所で喫茶店をやってるって話をするもんだから、後日お礼代わりにお昼を食べにそのお店に行ったって話もあったっぽいです。

はぁ〜・・・もう結構です。

途中で見つけたラーメン屋さんについては、後日改めて行ってみたら普通に閉店していたそうですよ。

その話は別の記事で改めて書きなさいよ。

以上ですかね。今回の記事もこれにて閉店ってことで。

閉店ガラガラ!