ちょっとしたダイアリー『助けて!フライパンが使えないの!』


おはよう、皆の衆。定次さんです。
現在時刻は21時前。
世間では既に晩ご飯を食べ終えて、リビングのテレビの前で団らんを満喫しているところも多いでしょうが、残念ながら私は未だに食事を口にしておりません。
口にしていないと言うと少しばかり語弊がありまして、厳密に言えば『夕食を口にしていない』状況に陥っております。
いつもならば今より1時間も前には適当な飯にありつけている場合が多いのですが、如何せん今日はこの記事を書き上げなければ食事を摂ることが許されない――と、自分自身に勝手な制約を付けております。
別段、さっさと食事を摂ってしまって、早々に記事を書き上げれば良いわけですが、私の頭の中にある高等裁判所が「ダメ」と少し強めの口調で言ってくるものですから、私も渋々その指示に従わざるを得ません。
しかしながらいつまでも空腹を堪えながら記事を書くわけにもいきませんので、私自身もワンチャン上告を狙いたいところではございますが、如何せん私の頭の中には最高裁判所という機関が存在している――という事実が根っから無いとの噂で持ち切りですし、仮に上告が通ったところで次に法定が開かれる予定は再来月あたりになりそうだと専らの噂なので、仕方なく私は今回の記事を書き上げた上で遅い夕食を摂ろうかと考えております。
ただ今回、仮にこの記事が早々に書き上がったところですぐに飯にありつけることはなく、何なら記事の投稿した後からが長丁場になりそうだと風の噂で聞いたのですが――、実際問題どうしてすぐに食事につけないのか、まずはここで問題提起をしていきたいと思います。
今現在、私は台所のコンロで牛すじとコンニャクの煮込みを作っております。
本来であれば今日は冷凍餃子を焼いて白飯と一緒に召し上がる予定だったのですが、如何せん日中に買い出しに出かけた際、比較的お安く牛すじを購入することができたため今に至っております。
ただ、問題なのはこの煮込み料理を作る時にフライパンを使用してしまったということ。
最近我が家のフライパンはコーティングが剥がれて寿命が来てしまったという理由から、2本あったものをまとめて不燃ごみとして廃棄してしまいました。
後日、それに代わるフライパンを1本だけ購入して、最近では焼き鯖の調理などに絶賛大活躍していたわけなんですが――、その唯一のフライパンを今回の牛すじ煮込みに使用してしまっているというのが現状です。
早い段階でご飯だけでも炊いておけば……と考えてはいたのですが、急に気が変わって今の気分は焼きうどん。
冷凍庫の奥深くに長いこと押し込めてある冷凍うどんをそろそろ消費しなければという考えから、今日は確固たる気持ちで焼きうどんを作ろうと意気込みながらこの記事を書き進めております。
ついで、冷凍餃子も食べておきたい。
牛すじ煮込みはどうせまだまだ全然柔らかくなっていないと思われるので、とりあえず後日に回そうかと考えているのですが――このフライパンが使えなくてはうどんも餃子も食べられません。
一応のこと、玉子焼き用の四角いフライパンもあるのですが、こんなものでは焼きうどんは疎か餃子すらもまともに焼き上げることができません。
そもそものところ、鍋じゃなくてフライパンで煮込み料理を作ろうとしているという横着な考えを持っている時点で論外でしょうし、そんな考えを持つ人間に玉子焼き用のフライパンでは云々と講釈垂れられる筋合いはないでしょう。
覆水盆に返らず――。
水が盆から溢れたわけではないですが、一度作ってしまった牛すじ煮込みはもう生きている頃の牛に戻しようがありません。
コンニャクも生き生きと畑で育っていた頃に戻すには相当の魔力を要するでしょう。
出来上がった牛すじ煮込みをタッパーにまとめて、牛すじを購入したお店に返品しようとしたところで追い返されてしまうのは目に見えていますし、何なら追い返されたことに対して私の作った牛すじの素晴らしさが理解できない人間がいるものだと逆恨みをし、結果、お店に迷惑がかかってしまう可能性も考えられなくもありません。
――したらばどうするべきか。
仮に私がアラブの石油王であれば、きっとお金に糸目をつけずに新しいフライパンを購入してくるでしょうが、悲しいかな今の私には新しいフライパンを購入する財力こそ辛うじてあるものの、既にシャワーを浴びているため外出する気分になりません。
現在時刻は21時20分。
冒頭の書き始めから既に30分が経過したでしょうか。
こんな遅い時間になってしまえば大抵のお店は既に閉まっているでしょうし、仮にこんな遅くまで営業しているスーパーに出かけたところでお望みのフライパンを購入できる保証はありません。
何なら先程にも申し上げましたが、既にシャワーを浴びているため外出する気分になることは到底ないでしょうし――、あとは誰か有志の人が私の家に新品で高品質なフライパンを持ってきてくれるという可能性にかける以外にないかもしれません。
良い子は既に布団の中でスヤスヤと眠る大人の時間。
こんな遅い時間から得体の知れない誰かが勝手にやってきて、フライパン片手にインターホンでも鳴らそうものなら、当然私は恐怖に慄いて居留守を使い、すかさず警察へと通報をするでしょう。
「家の前にフライパンを持った怪しい人がいるのですが」
釈然としない反応を見せながらも、一応周囲のパトロールにやってきてくれる警察の人。
フライパンを持ちながら我が家の前でそわそわとした様子を見せていた人はあえなく御用となり、いよいよ私は本格的に夕食作りに困り果ててしまいます。
――さて、そろそろ冷凍うどんが茹で上がりそうです。
茹で上がったうどんをザルにあけ、空いた鍋に牛すじ煮込みを移し変えていこうと思います。
これで何とか夕食にありつける。賢い私はこうして日々を生き抜いていくのです。