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【空想カオスツール】触っちゃダメな換気扇

2024年7月10日シリーズもの,リスクヘッジ,夏のジジイ,換気扇,蜃気楼,食べ物で遊ぶな

空想カオスツール

おはよう、皆の衆。定次さんです。

夏ですね。暑いですね。まだまだ夏本番とは言えませんが、冬の頃の気候と比べたら圧倒的に夏に感じられる時期になりましたね。

アスファルトもジリジリです。遠くには逃げ水が見え、立ち昇る陽炎を覗けば歪んだ世界が見えてきます。

アスファルトの表面温度は既に電源入れたてのオイルヒーターの表面温度よりも大きく上回り、その上に生卵を割れば、たちまち老人から「食べ物で遊ぶな」と怒られてしまうでしょう。

残った生卵をしぶしぶ家へと持ち帰り、キッチンでフライパンを熱する……ほどほどに熱くなってきたところで生卵を割れば、みるみるうちに目玉焼きができあがります。

ジュージューと音を立てて焼き上がっていく目玉焼き……窓の外を見ると尚も遠くで陽炎が立ち昇っています。

焼き上がった目玉焼きを見てそろそろ昼食を食べようかと食器に盛り付けるのですが、結局のところ今は夏です。暑いですね。

 

こんな暑いと命の危険すら出てきます。

炎天下の中を1ヶ月間飲まず食わずで過ごした老人が、つい最近病院の待合室に映るTV番組でインタビューを受けていました。

彼はマシュマロが食べたいと串に刺した大きめのバーベキューを熱々のアスファルトの上へと擦り付けるのですが、結果マシュマロは触れたところからドロドロに溶けてしまい、細かな砂利がこびりついたマシュマロへと変貌してしまいました。

今にも串から落ちてしまいそうな、だらりとしたマシュマロを口に運ぼうとする彼の姿を見て「食べ物で遊ぶな」とテレビ画面を食い入っている老人が怒り狂うのですが、その老人、実は遠くに見える蜃気楼。怒鳴り声が聞こえたかと思えば、時偶吹いた風の中へと消えていったのでした。

 

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消えた老人の後を追って私は遠くに見える景色へと駆け出しました。

30mも走れば忽ち息が切れ、ドッと汗が吹き出します。

「居もしない老人を追いかけたところで何を得ることができる?」脳内に直接聞こえた問いかけは夏の季節が生み出した蜃気楼。

現実かどうかわからない問いかけに私は一人頷くやいなや家へと戻り、冷蔵庫に冷やしていた冷たいスポーツドリンクをグラスへと注いで、鼻の頭から垂れる塩辛い汗とともにごくごくと飲み干したのでした。

 

「生き返る」と大きな吐息を吐きながら唱えた独り言は開いていた窓から外へと響き、近くを歩いていた若い親子の耳に入りました。

親子は少しばかり目を丸くして立ち止まった後、すぐにクスクスと笑いながらその場を後にします。

外ではそんなことが起きているとはつゆ知らず、私は飲み干したグラスをそっとシンクの中へと置いて蛇口を回します。

勢いよく流れ出る水道水がジャーと音を立ててグラスの中を踊り、みるみるうちにその中を満たしていきます。

キュッと蛇口を止めたところでふと目に入ったのはカラカラと回る換気扇。特に回した記憶のないその換気扇は自ずとカラカラと回り続けています。

 

――外では爽やかな風が少し強めに吹き始めたようです。

尚もカラカラと回り続ける羽……ぼーっと眺め続けていると無意識に手が伸びていました。

ハッと気が付いて思わず手を引っ込める私。勢いこそないにせよ、回り続ける換気扇の羽に指で触れたらどうなるだろう……そんな好奇心にギリギリのところで理性が打ち勝ったところで大きく一息をついた夏の日の正午。


トトえもん

そんな時のために開発されたのがこちらの換気扇でして。

トトえもん

テッテレテーッテッテー!!
“触っちゃダメな換気扇"!!

コロッケル

なぁにこれ。

トトえもん

触っちゃダメな換気扇です。

コロッケル

なんで?

トトえもん

危ないからです。

コロッケル

なんで?

トトえもん

くるくる回るファンに触ったら怪我をするからです。

トトえもん

だから触らないように注意書きをファンに貼りました。

コロッケル

ふーん。

コロッケル

ファンに貼り紙したら意味ないと思うのですが。

コロッケル

ほら、回すとカラフルでキレイキレイ。

トトえもん

・・・。

トトえもん

若干の欠陥があったようなので作り直しますね。

トトえもん

ほれ。

コロッケル

なぁにこれ。

トトえもん

カミソリです。

コロッケル

危ないですね。

トトえもん

だったら好奇心で換気扇に指を突っ込まないようにしましょう。

コロッケル

はーい。

トトえもん

わっはっは。
いい子いい子。