新・オートミールと暮らす

健康に良いが、如何せん味が悪いと評判のオートミール。
いつの日か私もそんなオートミールの利点にあやかろうとオートミールを食する生活を続けてきたが、いつしかまた食パンをかじるだけの日々を過ごすようになってしまった。
そうして食パンにマーガリンを塗って食べるだけの生活を続けること早数年――気付けば私はまたオートミールに手を伸ばしていた。
オートミールは確かにまずい。
控えめに言えば不味く、お世辞にも美味しいとは言えない。
故に当時の私は何度も試行を繰り返し、最終的にはポタージュと混ぜて食べるのが一番マシだという結論を叩き出した。
朝食として食べる上で、タイパもコスパも悪くない究極の食べ方――それがポタージュに混ぜて食べるというもの。
今となってはちゃんちゃらおかしくてしかたがない。何故なら結局それでも『美味しく食べる』という域から脱することがなかったのだから。
最近、私の中では健康ブームが巻き起こっている。
早朝のウォーキングや夕方のボクササイズ、ジョギングといった有酸素運動をはじめ、日頃の食生活にも随分とこだわるようになった。
オートミールを食べ始めたのもその一環。
健康食を気にすることで献立自体が随分と粗食なものになってしまったが、それ故に食材本来の美味しさについて一層深堀りできるようになった気がする。
だからオートミールに再び手を伸ばしたのだった。
キッチンワゴンの上に置かれた食パンがなくなると同時に購入を決めたオートミール。
近所のドラッグストアで売られているのを見かけ、まずは内容量が少なめのものから……と手を伸ばしたが、私の決意がそれを許さず、結局買い物かごに入れたのは1kgもの大容量サイズ。
今ではキッチンワゴンの上でどすんと占領するかのように置かれているが、これがまたなかなか減る気配を見せず、コスパの良さを物語っている。
オートミールを食べ始めてからおおよそ1週間。
これまでは130円程度で買える6枚切りの食パンを3日に1度の頻度で買い続けていたが、1kgもの大容量オートミールはそのコストを大きく凌ぐ勢いで存在感を見せ続けている。
「小さじ7杯なんて大した量ではないのでは?」と閲覧者の皆さんからは思われそうだが、これを水に浸してレンジで温めたものがなかなかどうして腹持ちが良い。
パッと見、できあがったオートミールというのはマグカップの底4分の1程度にガビガビしたものがこびりついているだけにしか見えないが、ティースプーンで掬いながらゆっくり食べるとこれがまたちゃんとした朝食になるのが不思議だ。
過去の私は都度お湯を沸かしてリゾットのように食べていたが、新しく決意を固めた私はレンジで温めて食べるようにした。
パッケージの裏側に淡々と説明書きされていたレンジでの調理法を見つけ、そのまま真似をし、採用したのが経緯である。
レンジで調理をすることで、お湯を沸かす手間が省け、スープの素という余計なものを用意する必要がなくなった。
そして何より、やはり公式が推すだけあってか食べる分にはなかなかどうして悪くない味だ。
ぐじゅぐじゅとした中に時折籾殻のようなカサつきがあったお湯に混ぜる食べ方とは全く異なり、程よく水気を吸ってホクホクになった大粒のオーツ麦がプチプチとした食感を楽しませてくれる。
リゾットでもない。おかゆでもない。これまでにない新しい食感。
調味料はわざわざスープの素を加えるまでもない。塩を少し散らすか、もしくはうま味調味料を振りかけるだけでも十分にいただける。
これは粗食に慣れた私の舌がオートミールを受け入れるようになったからか、将又、これまで盲点だった調理法がオートミールの美味しさを最大限引き出す結果となったのか――正解は翌日マグカップに沸かしたお湯を入れて明らかとなった。
オートミールを食べる初日。
私は説明書き通りにマグカップに小さじを使ってオートミールを注ぎ入れ、分量通りの水を足した。
そして軽くラップをして600wで2分30秒――私にしては珍しく、しっかりと言われた通りにオートミールを調理した。
2分30秒という時間は存外長い。
普段短いと感じる時間も、意識をすれば永遠にすら感じられる。
私はそんな作り出された永遠の中で朝の準備をすることとした。
食器を洗い、歯を磨く――しかしこうしてみると存外永遠という時間は短いもので、歯を磨いている途中、いつの間にかレンジは止まってピッピッピと何度もアラームを鳴らしていた。
オートミールは必ずしも素直な食材というわけではない。
ただ美味しくないと言われるだけではなく、その扱いもなかなかどうして難しいものだと思い知らされた。
オートミールを食する初日、レンジのドアを開くとマグカップの周りには熱々のオートミールがねっとりと散らばっていた。
どうやら熱膨張によって中から溢れてしまったようだ。
慌ただしい朝の時間帯。まさかこんなことで手間取るとはと歯がゆさを覚えながら、同時に自身が軽く被せたラップの脆弱性に落ち度を覚えた。
次回はもう少ししっかりとラップを被せよう――そう思って翌日にもトライをしたが、目を離した隙にまたしても膨張。
マグカップの周りをこれでもかとネトネトにして2度目の失敗をしてしまったのだった。
電子レンジでの調理法には難点がある。
まずしっかりラップを被せたところで、マグカップの中の蒸気はどこまでもラップをこじ開けてしまう。
溢れないようにレンジの中を見張るのも悪くはないが、朝の慌ただしい時間帯の中で2分30秒を無下にするのも忍びない。
だから私は今一度お湯を注いだ。熱湯を注いでリゾットに仕立て上げたのだった。
スープの素は使わず、シンプルな味付け。
ぐちゃぐちゃに混ぜでできあがった何とも悲惨な見た目のオートミールだったが、今の私の舌なら十二分に味わえる――そう思ってスプーンを口に運んだ結果、口の中に広がったのは数年前に食べた過去の味だった。
ドロドロで、カサカサで、喉越しが悪くて味が悪い。
膨張してレンジの中を汚すようなことはまずないが、やはりお湯で作るオートミールは『不味い』以外の何物でもなかった。
その翌日から私は電子レンジで確実に成功させる調理法を模索し始めたのだった。
電子レンジで温めると簡単に溢れてしまうオートミール。
随分と難しい課題かと思われたが、解決の時は存外早くやってきた。
マグカップの中で膨らむ蒸気は確かに被せたラップを押し上げる。
しかし、それが原因で漏れ出すまでに至るかどうかの判断は早とちりでしかなかった。
その日の朝、ラップが張るくらいにきっちりと被せてからレンジを試みたところ、蒸気が周りを蒸らすことはしたものの、無事に溢すことなくオートミールが完成した。
味付けもシンプルに味の素だけ。
ティースプーンで掬って食べるオートミールはプチプチとした食感をしており、ここでようやくオートミールの食べ方の最適解が電子レンジで温めることだと理解した。
確かに応用を重ねれば色々なメニューにもできるだろう。
しかし私が食べたいのは忙しい朝に食べるコスパの良い食事。
1kgものオートミールは6枚切りの食パンのコスパをも大きく凌ぎ、今や『然程悪くない』程度に食べられる調理法も確立させた。
現状は塩やうま味調味料といったシンプルな味付けでしか食べることができていないが、今後はもう少し工夫を凝らしても悪くはないのかもしれない。
あくまで朝食として食べる、コスパタイパのいい食事。
今後もお世話になるであろうオートミールの変革化に期待を寄せつつ、健康な食事を続けていきたいと思ったのであった。

















【定次さん】





