顔面プルタブの戦士〜Pulltab soldier of the face〜
定次さんが白といえば白は白に、定次さんが右といえば右は右となるのはあまりにも有名。
おはよう、皆の衆。定次さんです。
いきなりですがお金がありません。よってお金をください皆の衆。
色々と出資をしていたらいつの間にか口座のお金はミニチュアサイズの厚紙でできたダイヤモンド製の高層ビル一つ買えないほどに減っていました。
毎月の支出と収入を10万年単位で計算したら決して赤字になる予定ではなかったはずなんですが、いつの間にかお金は知らぬ方へと流れ、もしかしたら知らない人が私の口座から勝手に沢山お金を引き出していて、ちょっと使っては口座に戻すということをしているのかもしれません。
そんなことがあったとすれば大事件です。
こういう行為って何て呼ぶんでしたっけ。業務上横領罪ってやつでしたかね。
そうなると犯行に及んでいる人間は身内です。私が抱えている社員が勝手に私の口座から沢山お金を引き出していて親へと仕送り、そしてちょっと増やしては口座に戻しているのです。
これは許せません。私はこれからATMへと向かいATMの前で仁王立ちをし、入ってくる人皆に「すみません」と頭を下げながらその場を避ける日々を続けなければなりません。
そうこうしている間にも別のATMでお金が引き落とされているはずですので、私はそれを後から確認してショックを受けます。
ショックを受けて落ち込んだところ、犯行に及んだ社員がそれを見て後ろ指を指しながら内心申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら精神的ダメージを負い、両親へと相談、療養のためにリフレッシュ休暇を貰って、少しばかしまた私の口座から両親のためにとお金を下ろして寮から23kmほど離れた実家へと車で里帰りをするはずです。
私はそれが狙いです。
リフレッシュ休暇を貰って里帰りをするそのタイミングで口座からお金が引き落とされていたのであれば間違いなく奴が犯人であると絞ることができる。
犯人を絞ることができたらもうやることは一つ。パスワードを変える。これで奴はもう手を出せないでしょう。
まだまだ働き盛りの40代半ばの両親にお金を渡し、少し気持ちが良くなったところで奴は自室のベッドに転がり、スマホをいじりながら特に何をすることもなくおおよそ2週間にも及ぶリフレッシュ休暇を使い切るのです。
そして使い切ったところでようやく復帰し、久々に私の口座からお金を下ろしてやろうと企てたここでやっとパスワード変更に気付くのです。
パスワードがわからなくなってしまった奴はリフレッシュしたばかりであるというのに、もうこれ以上親にお金を送る工面ができないと嘆いて今一度慰労のために休みを取ろうとします。
しかしここで何度も休みが取れるかどうかわからないのが私の会社。
私がルーレットを回して見事当たりが出たら休みが取れますが、残念ながらルーレットは5年前の大規模火災によって焼け落ちてしまい、もう存在しません。
あの時に会社のピロティでBBQの火起こしのためにルーレットを使用してしまったのが悪かった可能性があります。
周辺家屋を5棟巻き込む大規模火災も今となっては笑い草となっていますが、ルーレットがなくなってしまった以上、奴はもう休暇を貰う手段がありません。
この心の溝を自ら埋めるには残る方法は一つ。またしても私の口座からお金を引き落とす以外にありませんが、パスワードが変わってしまった以上、どうやって引き落とすのか悩みに悩むところでしょう。
そこで思いつく方法がこれ。私に直接聞き出そうとするという方法。
奴は私の部屋の扉を勢い良くノックし、笑顔で私の口座のパスワードを聞きに来ます。ここでようやく奴が100%犯人であると確定できるわけです。
しかしここで話を終わらせてしまっては面白くない。
お人好しと理解されている私はそこで嘘のパスワードを伝え、更には新しいお金の「保管場所は最寄りの警察署内にあるよ」と笑顔で伝えて奴を警察署まで送り届けます。
率直でお金にしか目がない奴はバカ正直に受付へと行き、私のお金の保管場所について問い合わせますが、警察からしてみたら全く何のことかさっぱりわからないので追い返されてしまいます。
そして私も「いい迷惑だ」と警察から厳重注意を受けてしょんぼりするのです。
警察に行っても門前払いを食らったと肩を落として私の元へと戻ってきた奴と私は二人してしょんぼりするわけですが、ここでようやく私自身会社を持っているわけでもないし、社員を抱えているわけでもない、そもそも勝手にお金を引き落とされているわけでもなく、自身の金遣いが荒いから今こうして悩んでいるのであると気付くわけです。
だめだ。お金がありません。
このままでは夏タイヤを購入するのも躊躇してしまう。
どうか、どうか買ってもいない宝くじが当選して億万長者へとなれますように…!!