本物のクリームソーダとはどんなものかを教えてやろう。
おはよう、皆の衆。定次さんです。
現在時刻は深夜1時30分を回ったところ。
良い子も悪い子も等しくスヤスヤと温かな布団の中で眠りこけているそんな夜更け……昨日の仕事帰りに立ち寄ったスーパーで購入した納豆をちびちびと食べながら書いております、今回の記事でございます。
納豆と一緒に付け合わせる飲み物はもちろん野菜ジュース。食塩も無添加で絵に描いたような健康食が不摂生の夜に染み渡ります。
人間、寝る前の食事は体に悪いとよく耳にします。
しかしその食事内容が健康食であれば、どんな結果に転ぶのでしょうか?
――答えは誰にもわからない。
明日の朝、私の体が冷たくなって動かなくなっている可能性もありますし、今回の食事がトリガーとなって万年先まで長生きしているかもしれません。
結果として今回の健康的不摂生が長寿の秘訣に繋がることがあれば、私はこの健康法を謳って巨万の富を築き上げますし、志半ばで倒れるなんてことがあれば、私はこの世から逃げ切ったものとして好きに言われようが何のダメージも受けません。
何にせよ納豆と野菜ジュースを夜中に貪る時点で運命はわからない。どんな利口な人間であっても一寸先を見通すことはできないのです。
――一つ賭けをしてみましょう。
それは閲覧者の皆さんから見てこの健康的不摂生をしている私が翌朝に倒れるかどうかというもの。
皆さんは私が倒れる方に財産の75%をベットする雰囲気を出してください。
翌朝になって私が命を落としていれば皆さんの勝ち。起きて尚ピンピンと過ごしていれば私の勝ち。
一見皆さんにとって分が悪そうな賭けのように思えますが、ギャンブルというのは何かと負けそうなギリギリのラインが最も燃えるもの。
ここは一つ騙されたと思って私が倒れる方に財産を賭ける雰囲気を出してみてはいかがでしょうか?
今回の記事の書き始め、私は午前1時30分云々と申し上げましたが、実際の時刻は既に夜の21時を回ったところ。
翌朝に私が倒れているかどうかなんてお話こそしましたが、翌朝を迎えるどころか翌晩まで時間が進んでしまいました。
実際問題、フラグを立てた矢先で私自身命を落とすなんてこともなく、心なしか安堵しているところもありますが、皆さんにとっても賭けた雰囲気の財産が私に向けての香典へと変わらなかったので結果オーライなのではないでしょうか。
分の悪い賭け事で財産を賭けたつもりが、結果として手元に残ることとなった――どことなく儲かった気がして悪い気はしないでしょう。
結論から言えば今回の賭け事はノーゲーム。
命を賭したものであっても、そうでなくてもやはり賭博は良くないことです。
時事ネタを皮肉るわけではありませんが、今日もまた無事に一日を過ごすことができて良かったと――今回の記事ではそんな喜びを見出すお話ができたと思っております。
さて、話の折り合いがついたところで今回の本題に移りましょう。
今回の記事のテーマはタイトルを読んでの通り、クリームソーダについてのお話です。
先程は賭博についての話題が上がりましたが、賭博とクリームソーダに因果関係はございません。
嘗て別の世界線ではクリームソーダを賭け事に使われていたという話があると耳にしたことがありますが、様々な世界線を移り住んできた私ですら真偽を疑うほど考えにくいお話です。
恐らく遠い世界線の辺境の地で行われるマイナーなゲームのルールの一つであると推測しますが、今ここで語るクリームソーダは賭博とは全く関係のないただの飲み物。ごく一般的に親しまれているソーダフロートを指すことと予め断りを入れさせていただきます。
――随分と前置きが長くなりましたが、クリームソーダとは何たるかを語るにはある程度の慣らし運転も必要でしょう。
私がクリームソーダを語れば人類の歴史よりも長く間延びすることは周知のこと。回らない舌で熱弁を振るったところで何の説得力も持たないのは当然のお話です。
そして今回のこのお話を読んでいる皆さんがクリームソーダを好きであることも当然のこと。
今こうしてキーボードをカタカタと叩いている最中、ディスプレイの向こう側からクリームソーダが弾けている気配がするのをヒシヒシと感じております。
隠れてクリームソーダを飲んでいることを私に悟られたことでつい慌ててしまい、床に緑色をこぼしてしまったのも手に取るようにわかります。
悲しい事故を引き起こしてしまった!……と、つい頭を抱えてしまうところですが、大丈夫。
世の中にある全てのクリームソーダには保険がかけられていることは誰もがご存知でしょう。いつどこでクリームソーダを紛失してしまっても、私にさえ一言申告してくれたら近場の喫茶店でクリームソーダの1杯くらいは皆さんの自腹で購入して差し上げます。
クリームソーダは尊い存在。
メニューを見て高揚しながら注文し、生半可なものが出された時の怒りは想像を絶するものとなるはずです。
先日、私は最近できた喫茶店へと出かけました。
目的は夕食を食べるため。
「喫茶店で夕食?」と思われそうなところですが、意外にも喫茶店で食べる食事というのは存外ボリュームがあるもので、下手な飲食店よりも満足できる場合があったりします。
そして今回私はそんなできたばかりの喫茶店へと趣き、カツサンドとクリームソーダを注文したわけでしたが――……この時に出てきたクリームソーダが何とも衝撃的なものでした。
デザイングラスに注がれた可愛らしい見た目の濃い緑色。
クリームソーダにビジュアルを求めることはありませんが、そのソーダの色を見て「これこれ!」とばかりに私の気持ちは高ぶりました。
緑色から察してメロン味を彷彿とするそのソーダ。まずはクリームとは別にソーダ自体を味わおうとストローを深く突き刺そうとします。
――が、刺さらない。
上に盛り付けられているのはバニラアイスではなくソフトクリーム。
しかしそんなソフトクリームが邪魔をしているわけでもなく、何故かストローはグラスの奥へと進みません。
ゴツゴツとぶつかる硬い存在……それは紛れもなく氷。
綺麗なエメラルドグリーンの中を覗くと、まるで主役を奪うがごとくこれでもかと敷き詰められたどでかい氷がひしめき合っています。
こんなにも固い大きな氷の隙間を縫ってまでストローを刺さなければならないのか……。ひしめき合う氷はストローでかき混ぜようにも一枚岩のごとくまるで動く気配がありません。
ほんの少しだけ吸えたソーダを味わい、肩を落としながら私は仕方なくクリームへと匙を伸ばすこととしました。
ソフトクリームを単体で食べることは容易い。しかしクリームソーダの醍醐味はこのアイスクリームがソーダと混ざり合う瞬間にあります。
私はグラスのサイズに見合わないほどの長いスプーンをソフトクリームの端へと突き立て、ソーダの海の中へと押し込もうとしました。
――が、入らない。
ソーダを少し飲んだとは言え、嵩が減るのは些細なもの。
改めてまじまじとグラスの中を横から覗き込むと、これでもかと敷き詰められた氷の上に乗っかったクリームと水面で5mmはあろうかという隙間が開いているのが見受けられました。
元々フロート系はアイスと飲み物が簡単に溶けないように氷を間に挟むようにしてあるものですが、これでは流石に度が過ぎている。
これではアイスとソーダを別々に出されているのと同じではないかと私は憤慨し、尚も混ざらないクリームをただ黙々とスプーンで食べる羽目になりました。
氷でかさ増しするのは店側としてありえなくもない話。単に"ケチくさいクリームソーダ"として店の評価に繋がるものですが、氷でかさ増しをした挙げ句、商品として成り立たなくなっているとなれば話は別です。
既に口をつけている以上、店員を呼び出してクレームをつけることはできません。
私は座席の傍らに貼り付けてあったアンケートが書き込めるQRコードを見つけるやいなや、最低ランクの評価をつけ、その理由を上記の通り長々と入力して送信しました。
せめてもう少しでも氷が小さければ……最初に出されたお冷の氷が小さかったことに気付き、今一度私は酷く怒りを覚えて店を後にしたのでした。
今回私が送信したアンケートがお店に届いているかどうかはわかりません。
しかし、クリームソーダを愛する者として今回の件はどうしても声を上げざるを得ませんでした。
クレームを出したことで二度とお店に行かないということはありません。
私は1ヶ月後、改めて同じ店へと向かい、素知らぬ顔で同様のクリームソーダを注文したいと思います。
私の声がお店に届き、改善されていることを願って……。