激ウマ！5つ星ホテルの料理長から学ぶ簡単ハニーマスタードバター！

2023年6月14日2023年6月15日

皆さん、料理はお好きですか？

私が聞く限り、皆さんはあまりに料理が好きだからとキッチンに寝床を構えているとのことですが、この噂は確かなものでしょうか。

どうやら揚げ物料理をする度に枕を油染みで濡らして苦労をされているとか。

キッチンに敷いた布団が汚れることに関しては私から特に解決策を提案することは出来ませんが、今回の記事ではそんな料理が大好きな皆さんのため、とあるレシピを紹介して差し上げたいと思います。

　

これは私が別の世界線で生活をしていた時の話から始まるのですが、当時苦学生だった私は全国的に有名だったとあるホテルのレストランで皿洗いのバイトに明け暮れていました。

絶えず回されてくる汚れた食器を洗い続けるばかりの目まぐるしい日々でしたが、職場の方々はとても温かく、肉体的に辛いながらも頑張って働き続けられました。

食器洗いの際にストレス発散のために高確率で食器を割り続ける悪童だった私。いつからか給料は与えられるものから奪われるものへと変わり、温かく接してくれていたキッチンの方々も日に日に素っ気なくなり、正社員への登用を要求する私の願いも虚しく、務め始めて4日後には職場を後にすることに……。

これから先どうやって稼いでいけば良いものかと寒風吹く公園を彷徨っていたのですが、そこで私はとある人と出会いました。

宛もなくベンチに腰掛けて項垂れている私の隣に何食わぬ顔で座ってきた彼は汚いおっさんでした。

ボサボサに伸びた髪の毛と手入れされていないヒゲ。ニタニタと笑う口の中に見えるのはボロボロの歯。浅黒い肌にカビたような色の衣類……見たところホームレスのようで、そのボロボロの歯を見せながらこちらを凝視してきました。

アルコールと歯周病が入り混じった酷い口臭に思わず飛び上がる私。他にも空いているベンチがあるというのに何故私の隣に座ったのだと疑問に思いながらそそくさとその場を後にしようとしました。

すると彼は急に大きな声を上げて私を呼び止めようと名前を呼んだのです。

急な大声にその場に硬直する私。呼ばれた名前全く違うものでしたが、その勢いに圧倒されつい彼の方を今一度振り返ってしまいました。

振り返った私を見るやいなやニヤニヤとその汚い口元を一層大きく開き、今一度間違えた名前を呼んで話を聞くように促してくるおっさん。

彼いわく、自分は昔有名なホテルのレストランで料理人として腕をふるっていたとのこと。

今の姿からはまるで想像がつきませんが、紆余曲折を経てホームレスとして過ごしている……らしい。

私のことを呼び止めたのはパッと見で料理の才能があると見込んでとのことで、自分が伝えるレシピを世界中に知ってもらうよう託したいとのことでした。

未だ硬直したまま訝しげな表情を崩さない私でしたが、おもむろに彼は公園の端っこを指さします。その示す先には彼が寝床にしているであろう崩れかけのダンボールの塊がありましたが、どうやらそこに秘伝のレシピをしまっているとのこと。

ちょっと待ってろと彼は言うとゆっくりとした足取りでそのダンボールの塊へと向かいます。どうやら私のためにレシピを取りに行ってくれたようでしたが、私は怪しいからとその場を後にして自宅へと帰りました。

　

――鳴り響く着信音。

家に帰って寛いでいると昔懐かしい友人から電話がありました。

彼は今では5つ星ホテルの料理長。久々に聞く声は募る話で盛り上がり、最後には「簡単で美味しいレシピを考えたから休日にでも試してみて！」と親切に教えてくれました。

――遠く、公園の方向から響いてくるパトカーのサイレンの音……久々に花咲いた会話の余韻に浸りながら私は布団を被り、ゆっくりと目を瞑って一日を終えました。