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ゴールデンキウイものがたり

ゴールデンキウイの老夫婦の図

ご挨拶(神妙)

おはよう、皆の衆。定次さんです。

その昔、黄金に光り輝くキウイが栽培されているという国が栄えていたそうなんですが、度重なる内乱の末、それに呆れた神様が遂には大津波を起こして海の底へと沈めてしまったそうです。

その国の名前こそ『ゴールデンキウイ王国』。

その幻の王国を探し出す物語がたった今幕を開けようとしています。

 

ことの始まりはオセアニアの沖合、北方の国の漁船が雄大なるサンゴ礁で底引き網漁をしていたところ、引き揚げた網の中に小さな種が入っていることに気が付きました。船員はそれを単なるゴミだと思い再び海に捨てようとしたところ、別の船員がキウイの種であることに気が付き、その手から種を奪いました。

奪った種は直後、船員の指にめり込んだかと思えば忽ち根付き始め、みるみる養分を吸い取っていき一本の木へと変貌しました。その姿はまるで生き物のように湾曲した枝を伸ばし、3分もしないうちに大きな果実をつけました。

たまげて尻餅をついたままその光景を眺めていた船員の目の前に落ちる1個の実。木から落ちたとは言えまだ熟していないのかゴムボールのように跳ねて、腑抜けた顔にぶつかります。

癇癪を起こした船員はそのゴムまりのような果実を怒り狂って船の外へと投げ捨てようとするも、船外に張られた見えないバリアーにより弾かれ、跳ね返ってきた実がまたも船員の腑抜けた顔にぶつかります。

気を失った船員はそのままキウイの木とともに海へと沈み、この話は終わりを迎えたかのように見えました。しかしその様を目撃していた巡視船が沈みゆくキウイの木の一部に金色に光り輝く実を見たと言い、それを真に受けた人々が地元に土産話と持ち帰るも、皆ゴールデンキウイ王国は伝承上の話でしかないと一蹴され、腑に落ちないままこの事件は風化の一途を辿りました。

しかし実際に目撃をした一人はどうしても諦めがつかず、伝承上と言っても信じる力があればおとぎ話も事実にできると考えて新たに同好会を開くことと決めました。

友人と友人の寄せ集めで出来上がったゴールデンキウイ王国同好会。日々の活動の成果もあり、徐々に人員の獲得に成功していきました。

活動内容こそ細々としていますが、彼らのゴールデンキウイ王国への信仰心は並大抵のものではなく、事件から半年もする頃には事故が起きた方角へ毎日同じ時間に祈りを捧げるルーティンが出来上がるくらいにまで成長。その3ヶ月後には遂には現地で事実確認を行うための算段がつきました。

しかしここでゴールデンキウイ王国教の中で幻想は幻想のまま進行を続けたい派と、事実確認を行った上でゴールデンキウイ王国の存在を今一度確立させたい派で大きく揉めることとなり、結果として2つの派閥が元となって大きく分裂することとなりました。

発起人となった船員は板挟みとなり、何もかもが嫌になりました。自分の信じてきたものは何だったのか、考えれば考えるほど自分自身がわからなくなり、悩みに悩んだ末、気がつくと彼はパンを焼いていました。

新装開店ベーカリーハウス、ゴールデンキウイ王国。目指すは新商品の開発。2人の信用できる従業員とともに新しく発売したパンはふんわりと柔らかな生地にたっぷりと絞った生クリームとカスタードクリーム。そのクリームはさっぱりとした口当たりでしつこくなく、更にはこれでもかと詰め込まれたバナナを主とした果物たちが口の中に賑わいを作り出します。

地元ではずっと愛され続けるパン屋。新しく発売されたゴールデンキウイパンはメディアでも取り上げられ、今では常に長蛇の列が絶えない人気店となりました。


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