【Liar for your driving life.】カーナビは今日も嘘をつく
おはよう、皆の衆。定次さんです。
いきなりですけどカーナビって便利ですよね。
何しろ初めて通る道も臨機応変にわかりやすく案内してくれますからね。
実際今となってはカーナビのない運転というのはなかなかどうして心許ないものでして、カーナビがこうして波及するまでの時代というものは都度地図を広げては目的地に向かっていたものです。
私が車を運転する頃には既にカーナビが当たり前の時代になっていたものですから、そんな苦労は親の運転する後ろ姿を見て理解してたものです。
思い返せば私自身も原付一つで300kmの道のりを家で印刷したA4の地図7枚片手に移動した過去もあったような気がしますが、今思えば若さがあったからこそできた所業であって、我ながらよく実行できたものです。
さて、そんなA4の手作り地図を片手に遠出をした経験がある私ですが、実を言えば方向感覚に関しては右に出る者がいないくらい酷く音痴だったりします。
一度通った道だったり、地図を見て覚えるといった俯瞰的なことは別段苦手ではないのですが、主観から理解する方向の解釈とでも言いますか、一度建物に入ってしまったら出る時には元から来た方向を見失ってしまうくらい方向音痴が酷いです。
――こういった私自身の方向音痴度合いなんかを話しだしたらキリが無くなってしまうので、いつかまた機会があるときに日記の記事として投稿できればと思うのですが、今回の日記はそんな方向音痴の私が頼りっぱなしなカーナビについての体験談をつらつらと書き綴っていきたいと思います。
先日、私はちょっと離れた美術館を目的地として車を走らせました。
距離にして片道おおよそ100kmちょっとでしょうか。折角の休日なので下道をまったりと走って向かうのも良いかと思いましたが、現地に早い段階で到着してゆっくりと過ごすことを選んで高速道路を経由して向かうこととしたのです。
高速道路を通って片道おおよそ100kmちょっと。時間にしてみれば2時間ちょっとで目的地に到着したでしょうか。
現地では幸い客も少なかったということで思惑通りにゆっくりとした時間を満喫できたわけでしたが、一通り見終わっていざ美術館を後にしようとした際、まだまだ帰るには早い時間であると気が付きました。
高速で走ってきたのが裏目に出たのでしょうか。滞在時間はおおよそ1時間半くらいだったのですが、思った以上に時間を費やさなかったため少々時間を持て余してしまったのです。
そうであれば折角だからと私は一つ考えました。
まだまだ時間があるというのであれば、どこかしらにあるであろう近隣の道の駅に立ち寄って物産品を物色するのもありじゃないかと。
旅の途中でふと立ち寄る道の駅で特産品を眺めながらの買い物というのは何とも楽しいものです。
そうと決まればと私は即座にスマホで近隣の道の駅の名称を検索してカーナビへと入力します。
カーナビが示した目的地の表記は確かに検索した道の駅の住所だったのですが、どういうわけか"○○公衆トイレ"と一瞬だけ表示された気がしました。
どうも嫌な予感がよぎったのですが、「住所も一緒だし大丈夫だろう」と高を括って車を発進させました。
気分が高ぶっていたからか然程内容を確認するわけでもなく即座に車を走らせたのは私の悪い癖だったかもしれません。私はそのままカーナビの指示に従うままに来た道とは別の道へと車を走らせました。
道端には雪が残っており、先程まで雪が降っていたであろうと感じさせられる濁った天気でしたが、時間帯にしてまだ昼下がりの14時頃。
来た道とは別の道を走ってはいますが、方向感覚からして道の駅の名称からして自宅方面に向かっていることは間違いないと。
道中道の駅に立ち寄りがてら、自宅への距離を縮められればという甘い解釈で車をドンドンと走らせたわけでしたが、どうも様子がおかしい。
周りの風景は次第に寂しいものとなっていき、道幅は狭く、対向車の数も全然見かけなくなりました。
「道を間違えたかな?」とも思いましたが、特段道を外れた覚えもなく、引き返そうとも思いましたが丁度いいタイミングですれ違う対向車に望みを覚えてはカーナビの指す道をズンズンと進んでいったのでした。
「対向車が来たからこの先で大きな道に出るのかもしれない」
「カーナビの画面の外側には大きな道が見えるからこの先で合流するかもしれない」
「近道なのかもしれない」
次第に薄くなる望みのまま車を走らせましたが、その先で私はようやく車を停めることとしました。
これまで散々道幅が狭くなったり、殺風景な中を走ってきましたが、遂に曲がって進んだ先は舗装もされていない一本道。
周りは木々が生い茂り、薄暗くなった日差しと周りに建つ寂れた農具置き場が一層に不気味さを醸し出していました。
「これは…誘われているのでは?」
よくネット上に転がっている怖い話なんかでカーナビがおかしくなって変な場所に案内されるというものがありますが、今の状況はまさにそれであって、私は寸でのところで車を止めて引き返し、最後に曲がった交差点を別方向へと進んで難を逃れたのでした。
もしかしたらあの悪路は一時的なものであって、すぐに別の道に合流するんじゃないかとも思いましたが、今走る道と並行するように続くその細い道はやがてぐねぐねと折れ曲がり、画面の外へと、山の奥深くへと消えていきました。
咄嗟の判断で進んだ道は山間をぐねぐねと走り、これと言った見栄えする光景こそありませんでしたが、先程から走る道とは打って変わって妙な安堵感がありました。
引き返してからはあっという間に目的の道の駅へと到着し、その場所には道の駅なだけあってカーナビが表示した通りの大きめの公衆トイレがありました。
駐車場に車を停めて一息ついた時、あのままカーナビの指示に従ったまま悪路を走っていたらどうなっていたのかと今になって恐怖が追ってやってきました。
当初は面白半分に文句をこぼしながら恐怖と高揚感で車を走らせていましたが、もしかしたら本当にカーナビはあの道へと進ませるように最初から道案内をしていたのかもしれません。
一度道を逸れてしまったらカーナビは逸れた道からの最短ルートを案内するものですが、外れた後もカーナビは依然として悪路を走らせようと案内を続けました。
別方向へと進んでから5分ほど車を走らせてからようやく今走る道を示すようになりましたが、何を根拠としてカーナビはあの道を進ませようとしていたのかは今となっては本当に謎でした。
皆さんも辺鄙な場所でのカーナビの案内には十分に気をつけましょう。
「これ以上はだめだ」と少しでも思ったら引き返すのが吉です。